年齢を重ねていくにつれ、選ぶアイテムの基準は自ずと変わってくるもの。自分の“好き”がだんだんとクリアになり、自分らしい“こだわり”も出てきたり…。トレンドを追ったスタイリングというのも楽しいけれど、未来の自分のためにスタンダードで長く愛用できるものを選べる目も養っていきたいものですよね。今回はエシカルやサステナブルな発信をされているスタイリスト石井なお子さんに、長く使い続けることを意識したアイテムの選び方や使い方、自分らしい味を楽しむためのメンテナンスポイントなどを伺いました。
脇役じゃない、私だけの特別なアイテムにするために
「エシカル」「サステナブル」いずれも耳にする機会が増えたワード。どちらも人や地球環境に配慮し、長く安定した未来を築いていくための考え方を表した用語です。
昨今、自然災害や異常気象など、最近の環境変化を肌で感じることが増えてきましたね。私たちが今後も長く安心して暮らしていくためには環境とどううまく向き合って過ごしていくかが重要だといえます。
何か特別な行動はしなくても、例えばリサイクル素材を使って作られたアイテムを選ぶようにしたり、素材やアフターサービスなど商品や企業の情報や取り組みを元に「本当にそのアイテムを長く使うことができるか」を吟味しながら、商品を購入する、など日常の意識や行動を変えることから始めてみることが私たちの未来につながっていくといえます。
今回は「エシカル」「サステナブル」をテーマにその大切さや理解を深めていくためにスタイリスト石井さんにお話を伺っていきます。
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ーー石井さんがエシカル・サステナブルに興味をもたれたのは、お母様の影響が大きいそうですが、エシカル・サステナブルに取り組むようになったきっかけを教えてください。
日々の生活の中での会話からだと思います。 母との会話の中で、たとえば食事をしながら「今この時もご飯を満足に食べられない子どもたちもいるんだよ」と言われたり、台風の日には「おウチのない人は今ごろどうしているかな」と母と一緒に思いをはせたり。
また別の日には、無駄な電気を使わないようにと「チェルノブイリ原発事故」のことを話したり、東西ドイツが分断された時の話をして家族が一緒に暮らせる幸せを教えてくれたり、と世界で起きている社会問題への関心を日常的に感じることが多かったことで、心の優しい母の想いを自然と引き継いでいったように思います。
ーースタイリストとして、どのようにエシカル・サステナブルなファッションを楽しまれてきましたか?
古着は若いころから良く着ていました。古着屋さんはもとよりフリマ(フリーマーケット)に出かけることも多かったです。古くなったりデザインに飽きてしまった服を、ボタンを変えたり、丈を短くしたり、染めたりして、自分なりに“リメイクすること”を楽しんでいましたね。
大人になると、視点が少し変わって、環境に配慮された工場で生産されているアイテムや、オーガニックコットンが使用されているアイテムを意識的に選ぶようにしたり。さらに雇用の正当性などをそのアイテムの製造背景や過程も気にしながら、デザイン性の高いブランドを選ぶことが増えていきました。
ーー今まで楽しまれてきたエシカル・サステナブルなアイテムの、どんなところに心惹かれていましたか?
どんなアイテムもお気に入りであることには間違いないです。
先ほどお話した内容に少し被ってしまいますが、エシカルな考えの元にモノづくりをされたアイテムであることを思うと、心が“トキメキ”ます。
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さまざまなファッション雑貨の中でも革製品は丈夫で長持ち。特にATAOの革は国産レザーで、革好きにはたまらない、革本来の美しさや味わいを楽しめる正統派レザーが使われています。
さらに長く使えば使うほど、自分だけの“味”を楽しめるのも革の良さのひとつ。時代や世代を超えて出てきた、独特の風合いとスタイルを感じられるアイテムを選ぶことも、またサステナブルな消費といえるのかもしれません。
“永く”使い続けることで、そのアイテムに自分だけの思い出やストーリーも刻まれ、愛着も自然と深くなります。新しいものを頻繁に買って消費するのではなく、ひとつのものを大切に使い続けることで、アイテム“そのもの”の本当の価値を感じることもできるはず。そうした消費行動が“自分らしい”ファッションを楽しむことにもつながるのかもしれませんね。
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ーーひとつのアイテムを長く使うための、上質なアイテム選びのポイントは何でしょうか?石井さんが気をつけられていることを教えてください。
アイテムの仕立てに注目することが多いです。縫い目がしっかりしていて、ほつれやゆがみがないかどうか、ジッパーやポケットなどの細部の仕上げも丁寧に作られているかどうかをポイントに選ぶようにしています。
ーー素材やデザイン以外に、アイテムを長持ちさせるために心がけるべきことはありますか?
購入したところでリペアをしてもらえるかといったような、アフターサービスに注力されているかどうかも気にしてアイテムを選べると、ブランドのカラーや作り手の良さを守りながら長く使えると思います。
ーー革製品は経年変化を楽しめるのが魅力のひとつだと思います。石井さんが革製品の扱い方やお手入れで気をつけていることはありますか?
日本は湿気が多いので、カビが生えないよう通気性のいい場所に保管するようにしています。かつ出番の少ないアイテムたちも含めて、時々はしまっている場所から外に出して、メンテナンスもするようにしています。
ATAOではアフターメンテナンスにも力を入れており、愛着を持って長く使えるように、ほつれやパーツの破損といった修理にも対応しています。全国どの店舗でもお買い上げ証明書を持参の上、スタッフの方に修理をお願いしたい旨を伝えれば、ATAOのスタッフさんが職人さんとのやりとりまで請け負ってくれるそうです。オンラインでの購入の方や遠方の方はカスタマーセンターからのお問い合わせでも問題ありません。
日本ではまだ「修理して使う」ということが文化として浸透しきっていないと思いますが、革靴のソールを交換したり、服のほつれを直すことで、思い出のアイテムを長く使い続けることができます。丁寧にメンテナンスしていくことで愛着もさらに深まるはずです。
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ーーこれから私たちがエシカル・サステナブルなファッションを選ぶためにできることは何だと思いますか?
どうやって作られているのかといった生産背景を気にすること、トレンドに偏りすぎず、長く着られる(持てる)ようなベーシックなデザインを選ぶこと、そしてフリマのような場所にも足を運んでみて、リユースやリサイクルすることを楽しんでみてはいかがでしょうか。
ーー石井さんのように、“本当に良いものを見極める力”はどうしたら身につけられると思いますか?
最近はいろいろなことをスマホで簡単に知ることができますが、“本当に良いもの”は自らの体験から得られると思っています。
例えば、実際に国内外を旅をして、画面の中だけでなく本物を見て触って匂いを嗅ぎ、感じること。私が小さなころからノンフィクションの映画や本が大好きだからかもしれませんが、こうした“実体験”が本当に大切だと思っています。自分の知らないことを知ろうとすることで、“本当に良いものを見極める力”が研ぎ澄まされていくと思いますよ。
ATAOでは『VIVIRUMプロジェクト』に積極的に取り組んでいます。このプロジェクトはSDGs活動の一環で、スリーピングレザーを活用したアップサイクルの開発と普及を目的とした活動。
スリーピングレザーとは、デッドストックなどで廃棄予定の未使用の革素材のことで、高品質なのに使用されずに倉庫で眠っていた素材を利用することで資源の無駄遣い防止や環境負荷の低減に貢献しています。
もちろんメリットだけでなく、リスクや課題もあって、「供給の不安定さ」や長時間保管されていた素材の硬化による「加工の難しさ」、場合によっては特別な処理が必要になってコストが新しい革素材より高くなってしまう「コスト増加」が挙げられます。ATAOではこうしたデメリットや課題に対して、持続可能なソリューションを模索しながら、意欲的に取り組んでいます。
今年の9月に発売になった超軽量クロスボディバッグの「コラッツァ」とキルティングがおしゃれなリュック「トータス」にこのプロジェクトで培った技術がしっかり活かされています。製造過程へのこだわりだけでなく、機能もデザインも妥協は一切なし。どちらも撥水加工が施されたパフィ素材かつユニバーサルなデザインで、ジェンダーレスに使えるアイテムに仕上がっています。
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ーー石井さんがエシカル・サステナブルを体現し続けるために、最も重要だと思うことは何ですか?
日々のニュースに目を配り、良いこと悪いこと含め、日本だけでなく、世界中で今何が起こっているかを知ることだと思います。知ることが“行動を起こすこと”につながると思います。
ーー最後に石井さんにとって、エシカル・サステナブルとはなんですか?
優しさです!
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石井なお子 NAOKO ISHI
スタイリスト、株式会社THINKSTHINKS 取締役 兼 THINKSファウンダー/クリエイティブディレクター。
1994年に独立後、ファッション・インテリア・ウエディングスタイリストとして、雑誌、広告などで活動。その後、東京・恵比寿にセレクトショップ naughty をオープン。2016年よりエシカルな取り組み「THINKS」 をスタート。2022年にはTHINKSの取り組みを法人化した株式会社THINKSTHINKSを共同で設立し、取締役・クリエイティブディレクターに就任。
https://www.thinksthinks.com/
Instagram:@thinks_2016 / @nao705141
Hair & Make : TOM